韓国に以前、“UB通信”というのがあった。「流言飛語」を略した「流飛(ユビ)」からきたもので“うわさ通信”といった感じの言葉だ。言論統制があったころ、マスコミに出ない情報やうわさをそういって人びとは楽しんだ。
しかしでたらめも結構多く、1980年5月、反政府デモと軍が衝突した「光州事件」の犠牲者2千人説などその典型だった(実際は約200人)。
3年前の米国産牛肉をめぐる「狂牛病パニック」もそうだ。テレビの虚偽報道をきっかけに反政府・反米デモが政府をゆさぶった。昨年の韓国哨戒艦撃沈事件で政府発表の北朝鮮犯人説を信じないというのもそのたぐいだ。“風評被害”ということになるが、韓国人は政治好きだから与野党や左右対立による政治的風評被害が多い。
ところでソウルに春雨が降った。「春を促す雨」といわれ、気温も上がって週末は黄色いレンギョウや白いモクレンなど各種の花が一斉に咲くだろう。
ところが日本発の「放射能の雨」だといって大騒ぎとなった。雨がっぱにカサ、マスクという“重武装”もかなり見かけた。ネットや口コミなどで恐怖をあおる“UB通信”も影響している。当局がいくら「健康には問題ない」といっても聞かない。北朝鮮の核開発には平然としてきたのに。(黒田勝弘)